本当の対話とは?


 


 

最近「対話」という言葉をよく耳にするようになったと感じています。

SNS全盛の時代だからこそ、直接会って話をすることの大切さに気付く人が増えてきたからなのかもしれません。

でも「直接会って話す」ことだけが対話なのでしょうか?

 

先日お会いした某メーカーの管理職Aさんが、

「働き方改革で残業もさせられないのに、うちの会社でも1on1ミーティングが始まって大変ですよ。」

と嘆いていらっしゃいました。

 

「やり方とかを指導する研修はあったんですか?」と私が質問すると、

「人事からは2週間に1回、1時間の時間を取って面談室でやれ、と言われただけですけど。」

とのことでした。

 

「1on1ミーティング」も対話の一つです。

対話に必要なのは、人と時間と場所です。

だから人事の方がおっしゃるのは、そのとおりです。

 

でも、それだけでいいのでしょうか?

ここで少し実際の面談のケースを考えてみましょう。

 

<ケースA>

上司:「どうだ、特に困ったことはないよね。」

部下:「はい。まあ…」

上司:「そうだよな。数字は問題なく推移しているものね。じゃあ、今日はいいかな?」

部下:「はい…」

 

<ケースB>

上司:「どうだ、困ったことはあるか?何でも言っていいぞ。」

部下:「社員食堂ですけど、もっとおいしくできないんでしょうか?」

上司:「バカ!何言ってるんだ。仕事で困ったことがあるか聞いてるんだ!」

部下:「 … 」

 

<ケースC>

上司:「忙しい中で、新人のメンターにもなって、大変だと思うけれども、なにか困ったことはある?どんな些細なことでもいいですよ。」

部下:「うーん、そうですねえ…。あっ、そういえば、新人のS君ですけど、お尻の具合が良くないみたいで…。会社のトイレを洗浄便座に変えてもらえないでしょうか?」

上司:「うーん、なるほど、そうかあ。お尻の病は本当につらいですものねえ。」

部下:「そうなんですよ。トイレに時間がかかって、仕事の生産性も落ちてるように思うんです。」

上司:「なるほど、それは大変ですねえ。僕にできることはありますか?」

部下:「一緒に総務にお願いに行っていただけませんか?私だけだと門前払いになるので。」

上司:「わかりました。今からすぐに行きましょう。」

部下:「ありがとうございます。」

 

さて、3つのケースを見ていただきましたが、この違いは何でしょうか?

 

3つとも上司の質問から入っているのですが、その質問が違います。

ケースAは部下に「何もないです」と言わせる質問です。

この質問をわたしは「訊く」と書きます。

訊かれたことに対しての回答は「はい」しかありません。

それ以外を答えると相手が不機嫌になることを感じるからです。

 

ケースBは「聞く」質問です。

質問としてはいいのですが、問題は部下の答への返し方です。

部下としてはバッサリと切り捨てられた気分になるでしょう。

自分を否定されたように感じる人もいると思います。

 

ケースCの質問は「聴く」です。

部下が何か困っていることがあるんだろうなあ、と

言葉にならない感覚や感情を感じながら質問をしています。

そうすると部下の中に「何でも言えそう」な安心感が生まれます。

それが部下の本音の困りごとを引き出します。

さらに、部下が言ったことに上司は「共感」をしています。

部下の悩みだけでなく、新人社員の痛さ、つらさ、情けなさも自分ごとのように感じています。

 

対話で大切なことは、ケースCの「聴く」です。

聴くことで部下はいろんなことを考えます。

そして話したことに対して上司が共感してくれると、元気になります。

自分を認めてもらえている、大切にされていると感じます。

これが信頼関係を強め、仕事に対するエネルギーを高めるのです。

 

聴くことと共感すること。

これがなければ対話と言うことはできないと私は思います。

でも、どうすれば共感ができるようになるのか?

また、共感が生まれる環境をつくれるのか?

それは、回を改めてお伝えしたいと思います。

 

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